人間国宝の狂言師・野村万作による袴狂言『釣狐』の記録映像制作
背景と目的
「狂言は猿に始まり狐に終わる」という言葉で知られるように、『釣狐』は狂言修業の大きな関門であり、狂言師としての技術の粋が求められる大曲です。台詞・語リ・謡といった 発声面、狐の物真似・アクロバット・舞といった身体面の両方に難易度の高い口伝・秘伝の連続が見られます。人間国宝の狂言師・野村万作氏は、『釣狐』を25歳(1956年)での初演以来、26回以上演じ、近年は面・装束を付けず、紋付袴姿で演じる「袴狂言」としても回数を重ねてきました。その過程で伝統を継承しながらも自らの創意工夫もとり入れ、まさに 「至芸」という域に達しております。この素晴らしい芸・技を後世に伝えるべく、NTT ArtTechnology が8Kの記録映像を制作しました。
取り組み内容
2021年に、横浜能楽堂にて袴狂言『釣狐』を収録用に上演し、11台の8Kカメラで、記録映像を制作しました。普段カメラが入ることのない舞台上や鏡の間などでの撮影も実現しました。通常の舞台収録では見ることのできないアングルや、8Kが可能とする高精細な映像による細部のクローズアップや音の繊細さにより、野村万作氏がまさに目の前で演じているかのような臨場感を堪能できる作品となっています。
制作した映像をNHKに提供し、2022年5月に NHK BS8K にて、続いて6月に NHK E テレにて放送されました。また、2023年に野村万作氏が文化勲章を受章された記念として、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC](以下、ICC)にて上映しました。ICCシアターは2023年に8Kの上映設備を導入しており、『釣狐』を大型の8Kスクリーンでご覧いただけるのは、全国でも初めての試みとなりました。

映像作品の概要と構成
本映像作品は 3 つの映像で構成されています。袴狂言『釣狐』の本編、野村万作氏ご自身が 狂言師として取り組んできた『釣狐』にまつわるエピソードを紹介する「インタビュー編」、 『釣狐』で使用される装束や道具、面について紹介する「装束・道具・面編」からなります。
⑴本編:袴狂言『釣狐』(約 64 分)
- 白蔵主・狐:野村 万作
- 猟師:野村 萬斎
- 後見:深田 博治、高野 和憲
- 笛:松田 弘之
- 小鼓:鵜澤 洋太郎
- 大鼓:亀井 広忠
- 撮影:2021 年 8 月 6 日、19 日、20 日
- 場所:横浜能楽堂


⑵⑶狂言・釣狐の世界 『至芸への道』 + 『装束・道具・面』(約55分)
- 撮影:2021年12月~2022年1月
- 場所:野村よいや舞台


- 企画・制作 NTT ArtTechnology
- 制作協力 NHK エンタープライズ
- 協力:万作の会、横浜能楽堂